つきについて

自動扉が、作為的に開かなかった

深夜三時を超えた東京の街に、
一晩を寒さから凌げると考えた策は、
入口を突破できないという、
太刀打ちのできぬ壁を前に終結。

「仕方ないな…」。
男は、やれやれという顔を見せながら
夜でも光が絶え間なく続くラインに顔を覗かせ、
一台のタクシーを停めては
儀式のようにいつもの挨拶で帰り路についた

一人になった男は、実はまだ諦めてはいなかった
自動扉以外の突破口があるはずだと
ビルの三六〇度の探索と三カ所の扉の開錠を試みる
しかし、壁は高く、壁は厚い。

そのとき、
中から疲弊感のためにスーツを乱した男が
一九時間拘束からの解放を遂げて
ただしかしその表情は安堵でも歓喜でも達成感でもなく
何も受け取れないことが表現であるかの顔で出てきた

いかにしても突破が叶わなかった壁は、
その男が通った自動扉により開かれた。
タクシーに吸い込まれた男と、ただ待った男の間にあったのは
自分のツキを知っているかどうかだった気がする

ツキだけを頼りに生きてきたことが
実力がつかない原因となるのか
ツキを実力とできる要因になるのかは
何を(無意識に)信じて道を歩むかによるのだろう

そのビルの中で、ツキについて考え、ここに記す。
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by gallery_isolate | 2008-10-18 03:30 | poem(詩) | Comments(0)