カテゴリ:prose poetry(散文詩)( 222 )

​七割どまりの幸せ

夏から秋へのグラデーションを感じ始めた9月の朝。

昨朝の雨を恨むことを忘れ、
少しずつ色づいていく視界を楽しみながら今朝を走っている。

建物も道路も公園も、鈍感な僕はそれ自体の変化は感じないが、
たった一つ、日々明らかに表情を変えて出迎えてくれる存在がある。

空だ。


今、建物の隙間から、
壮大なバラードを演出する照明のような陽の光が漏れている。

もっと開かれた空で見たい。
その一心で僕は、走る速度を上げ、いつもより手前で角を曲がり、
最寄り駅の西口から陽の光を臨む。

やはり壮大だ。
でも、もっと遠くから見たい。

走ろうと意識をしたことも覚えていない位、
気づけば西に向けて全速力で駆けていた僕は、
一つ目の横断歩道のところで立ち止まり、東の空を眺めた。

しかし、
数秒前を既に何段階も上書きしたような明るい空が
光の筋を完全に均してしまっていた。


それでも、
その景色に出逢い、その景色を追い求め、
その先の感動を想像できた。

思えば、この七割どまりの幸せを、
それでもありがたいことだったと思えるかどうかの積み重ねが、
いずれ幕を閉じるその時に幸せな人生だったと思えるかどうかを
心に残していくのではないだろうか。


そんなことを考えながら、時間と共に戻ってきた夏の中、
いつもの「今日の走り」に戻った。


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by gallery_isolate | 2016-09-29 12:59 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

憎悪と祝福

複雑と単純

不安と安心

脆弱と大胆

不服と納得

関心と粗略

真逆と相似

靄然と霧消
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by gallery_isolate | 2015-01-22 12:27 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

足から手

土の足跡から無限に伸びる手が生える

一秒経過するごとに握力が一グラム強くなる

いつか足を捉えて光へ進むことを妨げる

振り返ると土はいつしか沼になっていた
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by gallery_isolate | 2013-09-18 13:00 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

こころ

例えば、東京にて生まれ故郷のお土産が売られてて懐かしく感じ、
同時に、その売れ行きが芳しくない様子を見て少し淋しさを感じ、
同時に、思い出を他人に侵害され過ぎていないことに対する安堵を感じ、
同時に、自分しか知らないその味を知っている優越を感じるように、

心はとても器用で、
心はとても不器用だ。
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by gallery_isolate | 2013-05-15 13:00 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

語るのは

傍にいてくれる「君」がいない僕にとって
この体を歩かせてくれるのはやっぱり歌でしかなくて
その歌を奏でてくれるあなたが「キミ」ならば
その答えは「歌であり、キミである」だろう

この途のそのほとんどにおいて
直接の関わりを持てない「キミ」にだけ救われているなら
この途の色は言葉の彩りで華やかなのに
その応えは「嘘であり、夢である」だろう

傍にいてくれた本当の「君」を想って
思い出を心の引き出しから引っ張り出しては
当時の色を、香りを、音を蘇らせてくれる
そのとき初めて、
その答えが「君」になり、歌が本当の彩りを添えてくれるだろう
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by gallery_isolate | 2013-02-04 23:48 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

言葉を心のカメラにして

東京から夜空の帰り道

視界からは動かない翼を眺めると
その周りに、その時間には似合わない明るい雲が見えた

不思議だな、と思いながら狭い窓から覗くと
無言で輝く真っ白な満月

今日は厚い雲の絨毯が敷いてあるから
きっと地上の人には見えないんだろうな、
そんなことを思いながら
独り占めの月をさらに思い出に刻もうとカメラを手にした

しかし、機内の光が写る、カメラが反射する、
窓が邪魔してうまくいかない


そうして諦めた僕は、その景色を思い出せるよう
こうして言葉を綴ることにした

もう二度と同じ空を見ることはない

でも、この言葉を読み返せば、色も光も思い出せるはずだ
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by gallery_isolate | 2012-07-11 12:55 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

関係について

一、自分について

自分が生まれるずっと前から
「自分を間接取り巻く関係」は生まれている

あらゆる可能性を秘めたこの身体も
この関係が、とある行動を禁じていく

関係とはつまり、透明な制限装置である

自分が生まれた瞬間に
「自分を直接取り巻く関係」も同じく生まれた

あらゆる可能性を秘めたこの頭と口も
これらの関係が、とある言動を禁じていく

関係とはつまり、透明な制限装置である



二、命を持ったリボンについて

二本のリボンは、結ばれあったその日に
共に結ばれ続けていく関係を生み出した

結び目の窮屈さや座標のずれが生じても
関係が、第三のリボンとの繋がりを禁じている

関係とはつまり、透明な制限装置であり
関係とはつまり、冷たく透明な鎖である


いつか未来、片方のリボンが緩急つけて、
綻び、風吹き、空を舞い、
巡り逢い、結ばれて、喜べば、

関係とはつまり幸せの縄張りとなり
制限とはつまり喜びの束縛となるだろう
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by gallery_isolate | 2012-06-02 10:00 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

TPO二面性

夏の日に日差しを避けて、

冬の日に日差しを求める。


そんな感じでしょうか、

あなたの目に映る、軽薄な姿は。
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by gallery_isolate | 2011-11-26 22:23 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

真赤な作家

変化は退化
効果は悪化
感化も鈍化
硬貨も酸化

戦火は軟化
劣化で降下
愚かな短歌
単価も低下

昨夏の高架
引火の結果
真赤な作家
月下に献花
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by gallery_isolate | 2011-07-31 12:04 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)

葛藤

扉のチェーンをかけなかった。

それが、せめてもの優しさだった。
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by gallery_isolate | 2011-07-11 20:34 | prose poetry(散文詩) | Comments(0)