転 -ten-

「あ、」

読み掛けの本が閉じたことすら
気にも留めずに下を見た

床に落ちたのは灰皿と灰
ひじにあたって落としてしまった

「今日は良い事がないな…」
目を閉じ、深くうなだれた

また一つ増えた仕事に撮り掛からなきゃ、と
目を開け、床に手を伸ばした時

既に伸びていたもう一つの手の先に
笑顔でコーヒーをくれた店員さん

「スーツは汚れていませんか?」

真っ先に相手を気遣う言葉に
久し振りの「驚き」を覚える内に

すぐに灰皿と灰は視界からなくなり
いつもと同じ床に戻った

不運と思えた予期せぬことで
「ありがとう」と思える幸せをもらった
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by gallery_isolate | 2009-02-16 23:17 | poem(詩) | Comments(0)

てれかくし

レストランに行きたかったけど
時間がなかったんだよね

でも今日こそは伝えたかったから、
落ち着ける場所が良かったんだ

あれが駅のホームだったり
コンビニだったりしたらあじけ無かったでしょ?

無邪気にジャーマンドックを頬張るから
大きく開けた口で、おしゃれな服も台無しで

緊張感がないなぁって思ったけど
緊張なんかしてるはずないよね

「一口ちょうだい」って
大きくない口をめいっぱい開けたのは

気を紛らわすためだったの

てれかくしの一口のあと、
自由になれて思わず伝えた

二人の人生を変えたいための
魔法の言葉を受け止めて
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by gallery_isolate | 2009-02-08 14:20 | poem(詩) | Comments(0)

はじまりの「さよなら」

全校生徒の数が一気に
少なくなるこの一時期に、
もれずに何とか巣立てた私は
「私服」の日々へ潜り込んだ

この月の先には、見知らぬ場所で
また「学ぶ日々」が始まるのに
なぜだか心が弾んでいるのは
まだ見ぬ"じゆう"への憧れね

ミルクもシュガーもいれなかった
ブレンドコーヒーは苦かった
そんな初めての経験だけで
大人な表情(カオ)になれた気がして
 
その瞬間に自覚したのは
未来(あした)を楽しみたい私
新たな一歩をはじめるために
これまでの自分に「さよなら!」しよう

-この節目が私を変えるわけじゃなく
  この節目に私が変わるんだから
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by gallery_isolate | 2009-02-06 13:35 | poem(詩) | Comments(0)

しあわせの「しろ」

吐息も白に色附く季節。

何かを楽しみにしているのか、
それとも寒さがそうさせるのか、
道行く人を足早にする、
この季節にはそんな力がある。

川に佇む小石のように
忙しく流れる波にひとり、
冷えた躰を電信柱に寄せて、
高校時代の旧友と待ち合わせ。

出逢えた瞬間の喜びが
一旦、体温を押し上げて、
もっと総てを温めたくて言った、
「落ち着ける場所に行こっか」。

カフェラテのカップを手に、
三年の空白を埋める会話が途切れたとき、
ふたり、窓の奥に拡がる景色を眺めた。
いくつもの雪が地面に寄り添っていた。
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by gallery_isolate | 2008-12-11 14:02 | poem(詩) | Comments(0)